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開業届の住所はどこを書く?納税地の選び方、住民票と違う場合、自宅以外の住所を使う場合、引っ越し・事務所移転の手続きまで

開業届の住所はどこを書く?納税地の選び方、住民票と違う場合、自宅以外の住所を使う場合、引っ越し・事務所移転の手続きまで

個人事業主として事業を始めるときに出す開業届(正式には「個人事業の開業・廃業等届出書」)で、手が止まりやすいのが住所の欄です。自宅と仕事場が別にある、住民票を移していない、自宅の住所を書きたくない、といった事情があると、どの住所をどこに書けばよいのか迷います。

開業届で住所を書く欄は、大きく分けて「納税地」と「上記以外の住所地・事業所等」の2つです。どちらに何を書くかは、納税地をどこにするかで決まります。この記事では、国税庁が公開しているいまの届出書(令和6年版の様式)と手続きの案内(2026年9月時点)に沿って、欄ごとの書き方をケース別に整理し、住民票と違う場合、自宅以外の住所を使いたい場合、開業後に引っ越したり事務所を移したりした場合の手続きまで説明します。

開業届を書く前にそろえておくもの

住所の欄に入る前に、届出書全体で必要になるものを手元にそろえておくと、書き直しが減ります。届出書には、氏名と生年月日、マイナンバー、職業、屋号(あれば)、開業日、所得の種類、事業の概要などを書きます。紙で出す場合は、本人確認のためにマイナンバーカードなどの書類を見せるか、写しを付けます。

住所まわりで決めておきたいのは、納税地をどこにするかと、自宅のほかに仕事場があるかどうかの2点です。この2つが決まれば、住所の欄は迷わずに書けます。

開業届で住所を書く欄は2つある

届出書の上のほうに、住所に関係する欄が並んでいます。1つ目は「区分」で、納税地が次のどれにあたるかを番号で書きます。「5」が住所地、「6」が居所地、「7」が事業所等です。2つ目は「納税地」の欄で、郵便番号と所在地を書きます。3つ目が「上記以外の住所地・事業所等」の欄で、納税地として書いた場所のほかに住所や事業所がある場合に、その郵便番号と所在地を書きます。

欄書くこと
区分納税地の種類を番号で選ぶ(5 住所地、6 居所地、7 事業所等)
納税地納税地にする場所の郵便番号と所在地
上記以外の住所地・事業所等納税地のほかにある住所や事業所の郵便番号と所在地

このほか、事業所を新しく設けたり移したりしたときに使う「事業所等を新増設、移転、廃止した場合」の欄もありますが、これは開業後の変更で使う欄なので後で説明します。

納税地は「住所地」が基本

国税庁の案内では、納税地は一般的には住所地で、国内に住所がある人はその住所地が納税地になります。ここでいう住所は住民票の住所ではなく、生活の本拠のことで、生活の本拠かどうかは客観的な事実で判定されます(所得税基本通達2-1)。持ち家か賃貸かは関係ありません。賃貸マンションで暮らしているなら、その部屋の住所が住所地です。

国内に住所が無く、居所だけがある人は居所地が納税地になります。居所とは、相当の期間続けて住んでいるものの、生活の本拠とまでは言えない場所をいいます。

事務所があれば、事務所の所在地を納税地にできる

住所のほかに事業所などがある人は、住所地に代えて、その事業所などの所在地を納税地にできます(所得税法第16条)。仕事場を別に借りていて、税務署からの書類も仕事場で受け取りたいときなどに選ばれる方法です。その場合は区分に「7」を書き、納税地の欄に事務所の所在地、上記以外の住所地・事業所等の欄に自宅の住所を書きます。

同じように、住所のほかに居所がある人は、住所地に代えて居所地を納税地にすることもできます。

ケース別の書き分け

よくある4つのケースで、どの欄に何を書くかをまとめます。

ケース区分納税地の欄上記以外の住所地・事業所等の欄
自宅で仕事をしていて、ほかに事務所が無い5(住所地)自宅書かない
自宅兼事務所(SOHO)で仕事をしている5(住所地)自宅兼事務所書かない
自宅のほかに事務所を借りていて、納税地は自宅にする5(住所地)自宅事務所
自宅のほかに事務所を借りていて、納税地を事務所にする7(事業所等)事務所自宅

自宅兼事務所の場合、住所地と仕事場が同じ場所なので、書く住所は1つで済みます。建物名と部屋番号まで書いておくと、税務署からの郵便物が確実に届きます。

記入の例

たとえば、世田谷区の賃貸マンションに住み、渋谷区のレンタルオフィスで毎日仕事をしている人が、税務署からの書類は自宅で受け取りたいと考えた場合は、区分に「5」、納税地の欄に世田谷区の自宅の郵便番号と住所、上記以外の住所地・事業所等の欄に渋谷区のレンタルオフィスの郵便番号と所在地を書きます。

同じ人が、仕事の書類は全部オフィスで受け取りたいと考えて納税地をオフィスにする場合は、区分に「7」、納税地の欄にオフィスの所在地、上記以外の住所地・事業所等の欄に自宅の住所を書きます。どちらを選んでも、所得税の計算そのものは変わりません。変わるのは、申告書を出す先の税務署と、書類が届く先です。

住民税と個人事業税は別の基準で決まる

所得税の納税地を事務所にしても、ほかの税金がそれに合わせて動くわけではありません。個人の住民税は、その年の1月1日に住んでいる市区町村で課税されます。個人事業税は、事務所や事業所のある都道府県が課税します。国税庁も、税務署のほかに都道府県税事務所などへの届け出が必要になる場合があると案内しているので、開業届とあわせて、住んでいる地域の都道府県税事務所の案内も確認しておきましょう。

一緒に出す書類も同じ住所で書く

開業と同じ時期に出すことが多い青色申告承認申請書にも、納税地や上記以外の住所地・事業所等を書く欄があります。インボイスの登録申請書にも納税地を書きます。これらは開業届と同じ住所で書いておくと、税務署の側で同じ人の書類として扱われやすく、問い合わせも減ります。インボイスの登録で住所が公表されることはありません。

住民票の住所と違うときは

納税地の住所は生活の本拠で決まり、住民票の住所で決まるわけではありません。そのため、実際に暮らしている場所が住民票と違う場合、開業届には実際に暮らしている場所を書くのが筋です。

ただし、住民票は住む場所を移したら14日以内に届け出る決まりです(住民基本台帳法)。住民票と開業届の住所が食い違ったままだと、本人確認の書類や郵便物のやりとりで手間が増えます。引っ越したのに住民票を移していないなら、開業届を機にそろえておくと後が楽です。

二拠点で暮らしているとき

平日は都内の部屋、週末は地方の家というように二拠点で暮らしている場合、生活の本拠はどちらか一方と考えます。生活の本拠が住所で、もう一方は居所にあたります。どちらが生活の本拠かは、住まいや仕事、家族の暮らしといった客観的な事実から判断されます。住所のほかに居所がある人は、居所地を納税地に選ぶこともできます。

自宅以外の住所を使いたいとき

自宅の住所を書類に出したくない、という理由で自宅以外の住所を納税地にしたい人もいます。納税地にできるのは、住所地、居所地、事業所等のいずれかです。事業所等は、実際に事業を行っている場所を指し、借りている事務所や店舗、作業場などが当たります。

コワーキングスペースやレンタルオフィス

コワーキングスペースやレンタルオフィスで実際に仕事をしていて、そこが事業の拠点になっているなら、事業所等として考える余地があります。一方で、利用規約で住所の利用が認められているか、郵便物を受け取れるかはサービスごとに違います。納税地にしたいときは、まず規約を確かめ、判断に迷う点は税務署に確認してください。

シェアハウスや実家に身を寄せているとき

シェアハウスで暮らしているなら、そこが生活の本拠であれば、その住所が住所地です。部屋番号の書き方は、住民票や郵便物の宛先と同じにしておくと届きやすくなります。引っ越しの合間に一時的に実家に身を寄せている場合は、どこが生活の本拠かを、荷物の置き場所や暮らしの実態から考えます。短い間の仮住まいなら、住所地は元の住まいや移る先のままということもあるので、迷うときは税務署に確認してください。

バーチャルオフィス

住所を借りるだけのバーチャルオフィスは、そこで事業を行っているわけではないため、事業所等には当たりにくいと考えられます。バーチャルオフィスの住所は、名刺やホームページ、ネット販売の表示など、外に見せる住所として使うのが一般的です。考え方の違いはバーチャルオフィスの住所は開業届に書ける?納税地と特商法の考え方で詳しく説明しています。

そもそも開業届の住所は、税務署に出す書類に書くもので、第三者に公開されるものではありません。自宅の住所がどこで人目に触れるのかは個人事業主の住所はどこで公開される?で場面ごとに整理しています。

開業届を出したあとで住所が変わったら

開業後に引っ越して納税地が変わった場合、国税庁の案内(タックスアンサー No.2091、令和8年4月1日現在)では、確定申告書に異動後の納税地を書いて出すことで変更されます。年の途中で、税務署から届く書類の送り先も新しい納税地にしたいときは、「所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する申出書」を異動後の納税地の税務署に出すことができ、この申出書はいつでも出せます。住所地に代えて事務所の所在地を納税地にする場合や、その逆の場合も同じ扱いです。

以前は、納税地が変わったら届出書を出す運用でした。古い解説には、引っ越しのたびに届出書が必要と書かれていることがあるので注意してください。

事務所を新しく設けたり、移したり、閉じたりしたときは、開業届と同じ様式の届出書で「事務所・事業所の新設等」の区分を選び、新設・増設・移転・廃止のどれかを書いて出します。事務所の所在地が納税地と違っても、出す先は納税地を管轄する税務署だけで足ります。

従業員に給与を払っている場合は、給与の支払事務を行う事務所を移したり閉じたりしたときに「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」も必要で、こちらは移転や廃止の日から1か月以内に出します。

住所が変わったときの手続きの一覧

変わったこと税務署への手続き時期
自宅を引っ越して納税地が変わった確定申告書に新しい納税地を書く。書類の送り先も変えたいときは申出書を出せる申告のとき(申出書はいつでも)
納税地を自宅から事務所に(または逆に)切り替える同じく確定申告書に書く。申出書も出せる申告のとき(申出書はいつでも)
事務所を新しく設けた、移した、閉じた開業届と同じ様式で「事務所・事業所の新設等」を出すその年分の確定申告期限まで
給与を払う事務所を移した、閉じた給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書移転・廃止の日から1か月以内

出す前に見直したい点

住所の欄は、書いたあとで一度見直すと、間違いのまま出すことを防げます。見直すときは、次の順に確かめると抜けがありません。

見直す点確かめること
区分の番号納税地を自宅にしたなら「5」、事務所にしたなら「7」になっているか
納税地の欄区分で選んだ場所の住所が書かれているか。建物名と部屋番号まであるか
上記以外の住所地・事業所等の欄納税地のほかに自宅や事務所がある場合に、もう一方が書かれているか
郵便番号それぞれの欄の住所と合っているか
住民票との関係暮らしている場所と住民票が食い違っていないか。食い違うなら住民票を移す予定を立てたか
賃貸契約自宅で事業をするなら、契約で事業での利用が認められているか
一緒に出す書類青色申告承認申請書やインボイスの登録申請書と住所がそろっているか

開業届の控えは、屋号の入った銀行口座を作るときなどに提示を求められることがあります。控えの住所が本人確認書類の住所と違うと説明を求められやすいので、控えも同じ住所で残しておきましょう。

提出先と提出期限

開業届は、納税地を管轄する税務署長に出します。国税庁の手続きの案内では、提出時期は「事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限まで」とされています。以前は開業の日から1か月以内と案内されていたため、その期限が書かれた解説も残っています。

出し方は、e-Taxで作って送るか、紙の届出書を税務署に持っていくか郵送します。紙で出す場合は、マイナンバーを書き、本人確認書類を見せるか写しを付けます。e-Taxで出す場合は本人確認書類の添付は要りません。

青色申告を始めたい場合は、開業届とは別に「青色申告承認申請書」の期限があります。1月15日までに開業した場合はその年の3月15日まで、1月16日以降に開業した場合は開業から2か月以内です。開業届と一緒に出しておくと忘れません。

賃貸の自宅を住所にするときの注意

開業届は税務署への届け出で、賃貸契約とは別のものです。開業届に賃貸の自宅住所を書くこと自体は問題ありませんが、契約で事業での利用が禁じられているなら、それは別の問題として残ります。大家さんとの関係で気をつける点は個人事業主の開業届に賃貸住所を書いて大丈夫?注意点を解説にまとめています。

自宅で長く事業を続けるなら、最初から事業での利用が認められた部屋に住むと、開業届の住所と契約の食い違いを気にせずに済みます。

よくある質問

開業届の住所は公開されますか

開業届は税務署に出す書類で、第三者が見られる形で公開される仕組みはありません。住所が人目に触れやすいのは、ネット販売での表示や、法人にしたときの登記など別の場面です。

屋号の住所は別に届け出るのですか

屋号は屋号の欄に書くだけで、屋号ごとに住所を届け出る欄はありません。仕事場が自宅と別にある場合は、その所在地を上記以外の住所地・事業所等の欄に書くか、納税地にします。

実家の住所で出せますか

実家が生活の本拠なら、実家の住所が住所地です。実家を出て別の場所で暮らしているなら、住所地はいま暮らしている場所になります。実家で実際に事業を行っているなら、実家を事業所等として扱うことは考えられます。

事務所を借りたら開業届を出し直すのですか

出し直す必要はありません。同じ様式の届出書で「事務所・事業所の新設等」を選び、新設として出します。

開業届の住所と、確定申告書に書く住所が違ってもよいですか

開業後に引っ越した場合は、確定申告書には新しい納税地を書きます。国税庁の案内では、確定申告書に異動後の納税地を書いて出すことで納税地が変わる扱いになっています。開業届を出し直す必要はありません。

開業届の住所を間違えて出してしまいました

納税地を管轄する税務署に連絡し、正しい住所をどう伝えればよいかを確認してください。住所が違うままだと、税務署からの書類が届かなくなるおそれがあります。

納税地を事務所にすると何が変わりますか

確定申告書を出す先の税務署や、税務署から書類が届く先が事務所の所在地を基準にしたものになります。確定申告書に変更後の納税地を書けば変わり、年の途中で書類の送り先を変えたいときは申出書を出せます。

まとめ

開業届の住所は、納税地の欄と、上記以外の住所地・事業所等の欄の2か所に書きます。納税地は、生活の本拠である住所地が基本で、事務所があれば事務所の所在地を納税地にすることもできます。その場合は区分に「7」を書き、納税地の欄に事務所、もう一方の欄に自宅を書きます。

住所は住民票ではなく実際の暮らしで決まりますが、住民票と食い違うと手間が増えるのでそろえておくのが無難です。開業後に引っ越したときは確定申告書に新しい納税地を書けば変わり、事務所を設けたり移したりしたときは同じ様式の届出書で知らせます。提出期限は、いまは事業を始めた年分の確定申告期限までです。

次にやること

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参考にした公的な資料

#開業届#住所#納税地#個人事業主#SOHO

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